ゴーンガール


映画「ゴーン・ガール」予告編 - YouTube

 

 日本では2014年後半に公開の映画。地方はややそれに遅れて、己の場合は観るのがそこから遅れて、2015年1本目の映画となりました。

 

 妻の突然の失踪、という筋の一部を耳にして、「なんだか『ねじまき鳥クロニクル』みたいなだな」と思ったのはあながち間違いではありませんでした。話によれば、原作では冒頭で妻が『ねじまき鳥クロニクル』を読むシーンがあるといいます。

 

 実際に作品を観ると、『ねじまき鳥クロニクル』を頭の少なくとも隅にくらいは置いた話だなあということがわかります。ごく基本的なところでは、

 

1 妻の突然の失踪(これはまあ影響とは呼べませんが)

2 長年生活を共にしていても、お互いにとって測り知れない「空白」があるということ。それは記憶についてであり、理解についてであり、共有することのできた時間についてでもあります。

3 個人のイメージや二人の関係性というミニマルなものが、意外なまでにそこで完結せず、拡がりを見せるということ。

 

 といったものが挙げられます。

 特に3についていえば、大筋では共通点といえますが、『ねじまき鳥クロニクル』とは基本的には大きく異なるところです。『ねじまき鳥クロニクル』が歴史の縦糸も含んで様々な要因に作中人物が翻弄されるのに対し、『ゴーンガール』は近隣の人からマスメディアに至るまで、複合的な手段を意図的に利用してみせる。そしておそらくは後者の特性こそが、この話の大きな魅力なのだと思います。

 

 毎度のことながら、「映画の感想」(音楽や撮影手法、効果、演出への言及を含めたものではないのがしょぼくれたところですが、面白い作品には違いありません。

 

 トレント・レズナーの監督からのニーズをまるで無視した音楽(デイヴィッド・フィンチャーはリラックスした音楽にしてほしいと言ったとかw)も効果的でしたし、多くのところで語られた、ロザムンド・パイクの変化(へんげ)と狂気に満ちた演技も素晴らしかった。

 

 観ても決してハッピーにはなれません。しかし体験の印象深さを思えば、観て損のない映画だと思います。